カナダが国防費増額へ、NATO目標の年度内達成目指す 米が謝意

カナダのカーニー首相は9日、同政権が国防費に数十億ドルを追加投入し、予定より大幅に早く、北大西洋条約機構(NATO)の2%の軍事費目標を今年度内に達成するとの見通しを示した。写真は同日、オンタリオ州オタワで撮影(2025年 ロイター/Patrick Doyle)
[トロント 9日 ロイター] - カナダのカーニー首相は9日、同政権が国防費に数十億ドルを追加投入し、予定より大幅に早く、北大西洋条約機構(NATO)の国内総生産(GDP)比2%の軍事費目標を今年度内に達成するとの見通しを示した。前政権下では2032年までにNATOの目標を達成するとしていた。
カナダは長年にわたり、米国を始めとするNATO同盟国から軍事費の増額を求める強い圧力を受けてきた。現在、カナダの国防費はGDPの約1.4%となっている。
カーニー氏は演説で「今こそ、緊急性、力強さ、そして決意を持って行動すべき時だ」と表明。新型潜水艦や航空機、船舶、武装車両、大砲のほか、海底や北極を監視するための新型レーダー、無人機(ドローン)なども購入する考えを示した。
米国のフークストラ駐カナダ大使は謝意を表明。CBCニュースに対し「これにより同盟はさらに強固になり、世界をより安全な場所にするために必要なものを導入できるようになる」と語った。
カナダ政府はGDP比2%の目標を達成するため、今年度に追加で90億カナダドル(65億8000万米ドル)を支出する。
カーニー氏はその後、記者団に対し、将来的に国防費のGDP比率が2%を超えるとの見通しも示した。
財政赤字が拡大する中でどのように目標を達成するのかとの質問には、歳出削減に向けた取り組みを指摘。減税は実施しないと述べた。
デジャルダンの副主任エコノミスト、ランドール・バートレット氏は、今回の追加支出により、財政赤字はカーニー氏が選挙公約で掲げた約600億カナダドルを上回るとの見通しを示した。
カーニー氏は、米国が集団安全保障という考え方から徐々に距離を置く方針を決めたことも、今回の決定の理由の1つだと説明。
「新たな帝国主義が脅威となっている。中堅国は交渉の場に参加しなければ自分たちが利用されることを知っており、国益と注目を得るために競争している」と述べた。