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〔GRAPHIC〕米株式ファンドから資金流出、欧州や新興市場へ

2025年06月12日(木)10時42分

LSEGリッパーのデータによると、5月に米国の株式投資信託と上場投資信託(ETF)から247億ドルの資金が流出した。米ニューヨーク証券取引所(NYSE)で5月撮影(2025年 ロイター/Brendan McDermid)

Patturaja Murugaboopathy

[11日 ロイター] - 世界の投資家は資金を米国株から欧州市場と新興国市場の資産に移している。米国の財政政策と債務の増大に加え、関税が景気後退を引き起こすリスクを巡り、懸念が強まっているためだ。

LSEGリッパーのデータによると、米国に登録された株式ミューチュアルファンドと上場投資信託(ETF)は5月に247億ドルの資金流出となった。

対照的に欧州のファンドには5月に210億ドルの資金が流入。年初来の流入額は825億ドルとなり、過去4年間で最高を記録した。

292本の新興国市場のETFは先月、合計で36億ドルの資金が流入し、年初来では計111億ドルの流入となった。

アナリストの話では、米国市場の安全資産としての位置付けは、ドル安と米国債相場の下落によって浸食され、通貨が堅調に推移している国の市場に資金を移す動きを誘発している。

欧州市場は今年、低金利とドイツの大型経済対策に対する楽観的な見方が追い風となり、米国市場をアウトパフォームしている。欧州中央銀行(ECB)は先週、景気を下支えするため、過去1年間で8日目となる利下げを決定した。ただ、米国との貿易を巡るリスクが高まっていると警告した。

モーニングスターのチーフ欧州市場ストラテジスト、マイケル・フィールド氏は、米国から欧州への資金移動は当初、バリュエーションを動機としていたが、投資家心理の変化による動きが拡大していると指摘。「投資家が米政権の行動によって動揺し、株式相場を圧迫する可能性を心配する中、こうした動きが中期的なトレンドの開始を告げることになるかもしれない」と述べた。

年初来ではMSCI米国指数が2.7%上昇したのに対し、MSCI欧州指数は約20%上昇、MSCIアジア太平洋指数は10%上げている。

新興国の株式ファンドも基礎的条件の改善により資金を呼び込んでいる。中南米は、他地域における貿易紛争と軍事紛争によって投資家が情勢の安定した地域を探す中、資産の安全な逃避先とみられている。

一方でアジア経済は、国内消費を原動力とする度合いが高まっている。

エマー・キャピタル・パートナーズのマニシュ・ライチャウドフリ最高経営責任者(CEO)は、債務の低減と成長の高まりによりアジア株は欧州株と比べ、米国からの資本流出の恩恵を受ける有利な態勢が整っていると説明。「イタリア、フランス、英国が債務負担の増大に直面する中、アジア諸国の多くは財政面の負担が比較的軽く、それによって債券利回りは安定的に保たれ、投資家の信頼感は損なわれていない」と話した。

12カ月後の業績見通しに基づく株価収益率(PER)は、MSCI米国指数が20.4倍、MSCI欧州指数は13.5倍、MSCIアジア太平洋指数は14.2倍となっている。

ロイター
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