3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終

INSIDE THE EXECUTION ROOM

2025年5月29日(木)18時30分
ジョシュア・レット・ミラー(本誌米国版調査報道担当)
タンジの死刑が執行されたフロリダ州立刑務所内の様子。女性2人を殺したタンジは4月8日、遺族ら24人の立会人が見守るなかで薬殺された

タンジの死刑が執行されたフロリダ州立刑務所内の様子。女性2人を殺したタンジは4月8日、遺族ら24人の立会人が見守るなかで薬殺された FLORIDA DEPARTMENT OF CORRECTIONS

<死刑存廃で揺れるアメリカでは一部の州で今なお死刑が行われている。フロリダ州で死刑の執行に立ち会った記者が伝える、死刑執行の生々しい迫真ルポ>

フロリダの春だというのに、その部屋は肌寒かった。そして、静まり返っていた。

4月8日、私はフロリダ州ライフォードにあるフロリダ州立刑務所で、死刑執行室に隣接する小さな部屋の最後列に座っていた。25年前に地元の有力紙マイアミ・ヘラルドの従業員ジャネット・アコスタ(当時49)を殺害した、マイケル・アンソニー・タンジ(48)の死刑執行を見届けるためだ。

【画像】死刑が執行されたタンジ

【動画】タンジの死刑を見学した記者は何を語る


部屋にはほかに23人の立会人がいた。アコスタの妹ジュリー・アンドルーと、その娘(アコスタにとっては姪)のジェニファー・バンダーウィアーもいる。

誰も言葉を発さず、エアコンのうなる音だけが低く響いていた。執行室との間にある大きなガラス窓にはカーテンがかかっている。やがてそのカーテンが上がると、担架にくくりつけられたタンジが見えた。体には特大のシーツがかけられている。

タンジは一瞬顔を上げて、ガラス越しにこちらを見た。死刑執行チームを監督する刑務官が電話を取り、ロン・デサンティス州知事から執行停止の指示がなかったか最終確認をする。指示はなかった。

これに先立ち、タンジは「最後の食事」をした。本人が希望した献立が用意されるのが慣例で、タンジはフライドポークチョップ、ベーコン、ベークドポテト、トウモロコシ、アイスクリーム、チョコレートバー、炭酸飲料を希望したという。

フロリダ州立刑務所内の様子

フロリダ州立刑務所内の様子(以下の写真、キャプションのない写真は同刑務所内の写真) FLORIDA DEPARTMENT OF CORRECTIONS

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ユーロ高大きく懸念せず、インフレ下振れリスク限定的

ワールド

米ミネソタ州議員銃撃、容疑者逮捕 標的リストに知事

ビジネス

再送(11日配信記事)豪カンタス、LCCのジェット

ビジネス

豪当局、証取ASXへの調査拡大 安定運営に懸念
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中