最新記事
防衛産業

「兵器は増やせても、人が足りない」...ヨーロッパの防衛産業を襲う人材危機

2025年6月2日(月)08時57分
チェコ・ベルカビテシュのPBS社の工場

チェコで働くパベル・チェシャル氏は、勤め先であるミサイルやドローンのエンジンを扱う企業がビジネスを倍に増やすことは十分に可能だと考えている。しかし、それは人材を確保できればの話だ。チェコ・ベルカビテシュのPBS社の工場で6日撮影(2025年 ロイター/Eva Korinkova)

チェコで働くパベル・チェシャル氏は、勤め先であるミサイルやドローンのエンジンを扱う企業がビジネスを倍に増やすことは十分に可能だと考えている。しかし、それは人材を確保できればの話だ。

欧州の多くの防衛関連企業も同じ悩みを抱えている。トランプ米大統領が欧州に対し、米国に過度に依存しないよう警告したことを受け、欧州各国の政府は弾薬、戦車、その他の兵器への支出を増額している。

チェシャル氏はチェコのPBSグループの事業担当副社長だ。プラハから車で2時間のベルカビテシュにある同社の生産施設では、約800人が勤務している。同氏はさらなる人材を探している。


 

「市場に人材さえいればすぐに雇うだろう。受け入れるためのビジネスはあるのだから」

同社は昨年賃金を8%引き上げ、2025年にはさらに10%引き上げて優秀な人材を確保したい考えだ。

欧州連合(EU)による8000億ユーロ(約130兆円)規模の防衛投資策は、今後10年間で数十万人の雇用を創出すると見込まれるが、専門技能を持つAIエンジニア、データサイエンティスト、溶接工、機械工といった人材は不足している。

ロイターが取材した10以上の企業、人材紹介会社、労働者らによると、企業は賃金と福利厚生などの待遇を引き上げ、他社から人材を引き抜き、地元の学生や学校にアプローチするなど、さまざまな方法で人材を確保しようとしている。

PBSグループは自社の訓練学校を設立し、自ら人材を育てている。同社の製造拠点の責任者、ミラン・マチョラン氏は、「学校や大学と協力するだけでなく、自社の訓練学校で人材を育てている」と語った。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、イスラエルとイラン巡るG7声明に署名し

ワールド

米、英に新たな鉄鋼・アルミ輸入枠導入方針

ワールド

ハーバード大留学生受け入れ停止の差し止め命令、連邦

ワールド

トランプ氏支持率42%で変わらず、移民政策への支持
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染みだが、彼らは代わりにどの絵文字を使っている?
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 7
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    コメ高騰の犯人はJAや買い占めではなく...日本に根…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中